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風街角

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2014年 11月 06日

巨樹の里へ  初めての友を案内して 1

先日、とても可愛いかたが、奥多摩を訪れてくださいました。
古くからの友人のエコさんが住む、中之条町出身のお嬢さんで、さきえちゃんと言います。
フェイスブックの中で、エコさん繋がりでお友達になりました。まるで娘のような年頃のお嬢さんです。

彼女は、今年の三月から、東京で一人暮らしを始めました。
20代の彼女には、夢も、悩みも、挫折もあって、今、青春真っただ中を走っています。
慣れない都会での一人暮らしは、時折、寂しさに押しつぶされそうになることもあるでしょう。

わたしにも、確かに通り過ぎた日々がありました。
真摯で、少し頑なで、恥ずかしがり屋で、寂しがり屋で、そして、何か確かなものを掴みたくて生きていた日々。

まるで、透明な空気みたいに澄んでいたこころとからだ・・・。
わたしにもそんな時代があった事を思い起こさせてくれる、さきえちゃんはそんな人でした。



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青梅駅で、約束通り、到着したホリデー快速の一両目に乗りこむと、まるで少女のようにあどけない彼女が立っていました。

"レモン色に袖がグレーの上着に、黄色と黒のチェックのショルダーバック" 彼女がメールに書いてくれた服装とぴったりだったけれど、
そんな目印が無くても、一目でさきえちゃんだと判りました。
「はじめまして、○○です。さきえちゃんですよね。」(^^) と、声をかけると、ちょっとはにかんだ笑顔を向けて
鈴を転がすような澄んだ声で、始めましての挨拶と、お礼の言葉を述べてくださいました。
礼儀正しくてとても感じの良いお嬢さんでした。

「昨夜は眠れなかったんじゃない?朝早く来てもらって、ごめんなさいね。」 
『はい、なかなか眠れなくって(^^) でも大丈夫です。』
とこんな感じで話しながら、終点の奥多摩駅へと着きました。空を仰げば真っ青な空にうろこ雲。
そろそろ高い山では紅葉が始まっただけあって、駅前には登山客がけっこうたくさんいました。



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東日原行のバスに乗り込み、倉沢で下車します。
今日は、倉沢ヒノキ(地元では千年檜と呼ばれています)という巨樹に逢いに行き、日原鍾乳洞を見に行く計画です。
もしも、時間通りに進んだら帰りに青梅のティールームに、ご案内するつもりで計画したのですけれど、
やはり、行き当たりばったりの性格なわたし・・・時間は大幅に遅れてしまい日原のみで終わりました^_^;


バスを降りると、林道沿いの木々の葉が優しい色に色付いていました。まだまだ紅葉の走りでしたけれど
『とっても気持ちいいです~♪来て良かった~(^^)それに自然がいっぱいで田舎を思い出します。
東京にも、こんな所があるんですね!!』と、サキエちゃんが嬉しそうに言ってくれました。



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巨樹に逢いに行くために、車道に設けられた階段を上り、斜面を登って行きます。
早速目についたのが、キッコウハグマの愛らしい小さな花でした。
そこここに、咲続いていて、とても可憐な花姿でした。


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閉鎖花が多くてなかなか咲かない花だと聞いていましたし、わたしも今まで見た事がなかったので嬉しくなります。
とっても地味なお花なのだけれど、さきえちゃんも、かわいい~♪と喜んでくれました。


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そして、リンドウの花も・・・登る道筋に転々と咲いていて、思わずカメラを向けました。
さきえちゃんもリンドウを見ると、ふるさとの中之条を思い出すと言っていました。



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わたしは、山路にひっそりと咲いたリンドウの花を見ると、昔聞いた歌を思い出すのです。

紫淡いリンドウは あなたと摘んだ恋の花
涙に濡れたふるさとの寂しい山に咲いた花

この歌を聴いたのは、多分中学生ぐらいだったように思うのですが、(記憶違いかもしれません)

問われるままにリンドウと 答えた花は愛の花
思い出辿れば 旅路はむらさき・・・
と言う歌詞が、何故か心に残っているのでした。


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そして、倉沢ヒノキの前に辿り着きました。ベンチに腰を掛け、いろいろな事を話し合いました。
さきえちゃんの話にこころを傾け、さきえちゃんもまた、わたしの話にじっと耳を傾けてくれました。

誰も訪れる人も無く、尾根に佇む巨樹の梢を風が静かに渡って行くのでした。
そんな空間に、時折りエナガやコガラたちが、枝先に止まり、囀り交わし去って行きました。

わたしたちの話を、ずっと聞いていてくれたのは何百年もここに立ち尽くし、悠久の時を刻みながら生き続ける倉沢ヒノキだけでした。


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とっても静かで、何故か心が癒されるのは、きっとこの巨樹の存在があるからなのではないかと思えます。
この樹が、いつ芽生えて、どんな生きざまをして、どれほどの時を生きて来たのか、わたしたち人は知る由もありません。
樹と人とは、生命のサイクルが違います。その異なる時間軸の中で出逢えた奇跡。
そして、親子ほど年の違うわたしたちが、こうして巡り逢えた奇跡を大切にしたいと思うのです。


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わたしが、奥多摩に生きる巨樹を探し求め彷徨っていた頃、何かを求めていたのだと思います。
そして、その頃、森の奥深くに佇む巨樹と向かい合った時、いつも心に浮かぶ歌がありました。
それは、吉田拓郎の"流星" という曲でした。


          流星

      たとえば僕が間違っていても  
      正直だった悲しさがあるから・・・流れてく
      静けさに勝る強さはなくて
      心の中では何を待てばいい・・・流れてく
      たしかなものなど何もなく
      ただひたすらに君が好き
      夢はまぶしく木洩れ陽透かす
      少女の黒髪もどかしく
      君の欲しいものは何ですか 君の欲しいものは何ですか




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本当に、巨樹と対峙していると、"静けさに勝る強さはない" と気付いたあの頃・・・
自然に抱かれ、時には涙し、自分の心を静かに見つめ直すことで癒されたあの頃・・・
さきえちゃんも癒されたらいいなと思い案内した倉沢ヒノキでした。


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さきえちゃんは、大きな自然に包まれて何だかとても癒されましたと言ってくれました。
『いつか屋久島の縄文杉を見てみたいと思っているんですけれど、何だか似ている気がします。
今日、千年檜に逢えて本当に良かったです。パワーを貰えそう!』と、じっと倉沢ヒノキを見つめていました。



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さきえちゃんを、その逞しい根っこに乗せた千年檜は、そっと寄り添っているように見えました。

        (さきえちゃんの了解をとって載せさせて貰いました)



そして、わたしたちが倉沢ヒノキに別れを告げた時には、予定の時間をとっくにオーバーしてしまっていました。


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でも、そんなことはどうでもよいと思えるくらい充実した時間がそこにあったと思えました。
千年檜を振り返れば、威風堂々とこの尾根に根を張りその太い幹を大きく広げて佇んでいました。
『また逢いにおいで、わたしはいつでもここにいるよ』 そう、言われたきがしました。


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次のバスが来るまで、まだ、40分ほど時間があったので、ちょっとだけ倉沢林道を歩きました。
木々はほんの少し色付きはじめていました。


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林道からは、倉沢谷が眺められます。美しい渓流はいつ来ても素晴らしいです。



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ところどころに小滝を散りばめて・・・ここを遡行する人々もいるようですが、ほとんど知られざる渓谷です。



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美しいリュウノウギクが咲いていました。



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岩肌を滴り落ちる岩清水、冬にはこの水が時間をかけて凍り、
美しい氷柱が幾重にも形成されまるで氷の宮殿のようになります。
「氷柱に閉じ込められた落ち葉に、日が当たるとキラキラと綺麗なんだよ。
そして、早春には可憐なハナネコノメが咲くのよ。」と話せば、
『わぁ、見てみたいです!』と目を輝かせるさきえちゃん。

そうだね。あなたに見せてあげたい。寒いけれどまたいらっしゃいね。


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そろそろかなと引き返せば、ちょうどバスが倉沢橋を渡って来たところでした。
わたしたちは、駆け寄りバスに飛び乗って、東日原に着きました。
バス停脇にある小さな食堂でお昼を食べることにしました。

若い娘さんを連れてくるには、あまりにも鄙びた食堂でしたけれどさきえちゃんは嬉しそう。


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おばあちゃんとその娘さんが営んでいる素朴で小さな食堂は、村の人の憩いの場のようでした。
わたしたちが入って行くと、おばあちゃんたちが席を譲ってくださいました。

わたしは中華そば、さきえちゃんはお蕎麦を注文しました。

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さきえちゃんは、珍しそうに店内を眺め、壁に貼られた虹の写真を見て感動していました。
『すごい!こんな時に、ここに居合わせた人は幸せですね♪素敵な写真を見せて貰えて嬉しい♪』


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おばあちゃんが作る昔ながらの中華そばは懐かしい味がして、何だか昭和にタイムスリップしたような気がしました。
さきえちゃんも、何だか田舎を思い出すと言って、美味しそうにお蕎麦を食べていました。
わたしは、心から嬉しそうにしてくれるさきえちゃんの素直な人柄が、とっても好きになりました。


「ほら、あの写真と同じ景色でしょ。真ん中の山は、本仁田山と言う山で日原富士と呼ばれているのよ。」
『わぁ!本当だ、この上に虹が架かったんですね♪素敵だったでしょうね~♪』


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『本当にここが東京だなんて信じられないです!』と、集落の中を歩きながら咲枝ちゃんがつぶやきます。



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「ここは、明治時代に拓かれた井戸なんですって、向こうの山から水を引いて来たのだそうよ。」



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「萬寿の水と言って、不老長寿の水なんですって、謂れが書いてあるね。」


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『わぁ、釣り忍ですね!家にも昔ありました。おばあちゃんが大事にしていました。』



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「あれが、稲村岩と言ってね。日原のシンボルみたいな山よ。石灰岩でできているけれど、この山は採掘されることはなかったらしいわよ」

『凄い山ですね~♪登れるんですか?』
「うん、頂上は狭いけれど、登れるよ。360度、展望は素晴らしいよ♪」


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「あの屏風みたいのが燕岩と言ってね。ちょうど日原鍾乳洞の向かい側にある大岩なのよ。」
『凄く険しそうな山ですね』 「うん、下から見上げると凄い断崖絶壁で迫力あるよ」



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わたしたちがのんびりてくてく歩いていると、途中、親切なおじさんが、車に乗せてくださって
ちょっとショートカットで日原鍾乳洞へと着くことが出来ました。
早速、鍾乳洞へと続く階段を降りて行きます。


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さきえちゃんは、昔、家族と群馬の鍾乳洞へ行ったことがあるけれど、あまり良く覚えていないから
始めてみたいでワクワクすると言ってました(^^)わたしも久しぶりでワクワクです(^^)

小川谷の澄んだ流れを橋で渡ります。


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この入口から堂内へと入ります。


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最初はこんな感じですが、


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だんだん天井が低くなって、身をかがめないと通れない場所もあります。


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堂内の案内図がありました。かなり広いことが判りますね。



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長くなりましたので続きはまた明日(^^)

by kazematikado | 2014-11-06 02:13 | 山と森


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