2016年 08月 01日
雲取山(2017.3m)山頂から 夏の雲取山は、わたしにとって青春の山です。 最初に登ったのは17歳の夏でした。初めての山小屋泊まりを経験した山でもあります。 その頃の雲取山荘は、丸太造りの小屋でした。なんというか粗削りで昨今のログハウスというのとはまるで違っていたように記憶しています。 山から伐ってきた木をそのまま加工せずに組んでいたように見えたけれど、そんなはずないですよね。 苔生していたからそう見えたのか?今となってはあいまいな記憶です。 針葉樹林の中に建っている山小屋は緑の森に同化しているように見えました。 今でも鮮明に覚えているのは、灯油ランプの小屋だったことです。夕暮れが迫るとあっという間に暗くなるからでしょうか。 まだ日のあるうちに点されたランプが開け放たれた窓の外の緑の木立の中に、ほんのりと浮かび上がるように揺れていたのが 何故かこころの琴線に触れたことを思い出します。 山荘は2階建で、2階は50人ほどの宿泊客が雑魚寝で寝るのです。わたしは初めての経験でドキドキしたのでした。 一階部分には土間があり、そこで煮炊きをしていたような気がします。食事を何処で取ったのかとか、ほとんど覚えていませんが、 ただ、薄暗がりの小屋の風景と小屋番の青年がランプのホヤを磨いていたのだけを覚えています。 山小屋の夜は早いので真夜中に目覚めて、たった一人そっと小屋を抜け出し、振り仰いだ満点の星空に圧倒されました。 漆黒の夜空に無数の星々が輝き、まるで呼吸をするように瞬いていたこと。 眼下遠く東京の街明かりがオレンジ色に見えていたこと。黒々とシルエットとなった森の中からフクロウの鳴く声が聞こえてきたこと。 ひんやりとした夜の気配に包まれた瞬間、憧れていた大自然の懐深くに居るのだと実感した今も忘れられない思い出です。 翌朝、まだ暗いうちに小屋を出て頂上を目指し、薄紫の東雲、雲海の彼方からバラ色に染まりゆく静かな夜明けに身を投じ やがて神々しく光り輝くご来光を迎えた時の感動は忘れがたいものでした。 山頂のお花畑も健在で朝露の宿る高嶺の花たちとの出会いは、花とのふれあいの原点でした。 その後、3回登った後、結婚子育ての時期を経て18年後の夏に、中学生と小学生だった娘を連れて再開した山旅の初めも雲取山でした。 前置きが長くなりましたが、これで7度目の雲取山、そして、季節はいつも夏です。 山頂の避難小屋 7月4日 (1日目) 鴨沢西…後山林道入り口…林道終点…三条の湯(泊) 7月25日~26日に催行する登山ツアーの下見として、担当ガイド4名で出かけました。 この日は、最高の山日和で、燦々と降り注ぐ太陽と林間を吹き抜けるそよ風が道連れでした。 終点の鴨沢西でバスを下車、降りたのはわたしたち4名のみでした(^_^;) 『気を付けて行ってらっしゃい!』と、運転手さんに見送られしばらくは車道歩きです。 抜けるような青空に真っ白な雲、緑深い山々は力強さを感じ、典型的な夏山の風景ですが、 山の上に湧き上がる雲を眺めていると何となく秋の雲もあるようで、さながら行き合いの空のようだと思いました。 車道を離れ、後山林道を登り始めるとひらひらと蝶たちが飛び回っています。 ガイド登山の時は、写真メインではありませんのでコンデジしか持ち歩きません。 ですから、小さい画像ですが、ウラナミアカシジミさん。 翅の突起が愛らしいミズイロオナガシジミさん、こちらも日中は木の上や森陰でじっとしている蝶のようです。 夕方になると活発に活動するそうですが、たくさん飛んでいて久々の出会いに嬉しくなりました。 コミスジさん、黒地に純白のラインがおしゃれなんです。蝶を覚え始めたころに出会ったので良く覚えています。 後山林道の車止めゲート 滴る清水と緑の苔が涼しげでした。コントラストが強すぎて写真としてはイマイチですね。 常に眼下に流れる渓流は、涼やかな風を送ってきます。 水面が周りの緑を映して美しいです。 こんな古びた木橋も現存しています。興味をそそり渡ってみましたが、 痛みがひどく踏み抜きそうで、少し怖いです。 木洩れ日が零れる林道。退屈な林道歩きですが、こころ楽しくさせますね。 木陰を縫って降りてくる木漏れ日が、透過光となってまるで緑のランプのよう。 青もみじが、緑のグラデーションを作って美しいです。 オオルリやキビタキ、姿は見えないけれど夏鳥の声が響きます。 イワタバコの若い葉が岩肌にびっしりです。ツアー当日はきっと花の盛りでしょうね。 三ツ山が見えてきました。いよいよ長かった林道も終点です。 ここからは、山道となります。そして広葉樹の美しい森の始りです。 渓谷はいよいよ深くなり高巻いていく山道からは時折美しい滝も眺められます。 この森は巨樹・巨木の森でもあります。 素晴らしいカツラの巨樹の下を通って行きます。 秋には素晴らしい黄葉に包まれるだろうなぁとその光景を想わずにはいられません。 シオジの巨樹、しなやかに伸びあがるシオジの樹形も好きです。 やがて渓流のほとりの三条の湯の天場が見えてきました。 今日はグリーンのテントが一張り、傍らの木をツリークライミングで登っている人影がありました。 銚子の滝 山女橋(ヤマメ橋) 若かりし頃、やまおんな橋だと思っていたわたし(笑) 三条の湯は薪でお風呂を炊くため、たくさんの薪がストックされています。 立派な角の鹿のしゃれこうべが飾られた三条の湯の受付。 わたしが17歳の時に来た時から変わっていません。 今日はわたしたちの他には、4名の方が宿泊されていましたので、お風呂は時間を決めて 交互に男湯と女湯になります。女性はわたしのみでしたのでひとりのんびり~♪ 女性が入っていますよということで、木札をひっくり返します。 “をんな”と書くのですね(^_^;) 源泉かけ流し~♪ すべすべのいい湯です♪ 湯気に煙る夏山の緑、湯船のお湯まで緑色に染まります。 こんな明るいうちから山小屋でお風呂に入れるなんて、なんだか、しあわせ~♪ さっぱり汗を流してお風呂から出てくれば、夕暮れの空に蝉しぐれ そろそろ晩御飯です。このかまどで炊いたおこげがあるごはん!! 三条の湯の社長さん、またの名を雲取山のロバート・デニーロさんが獲った鹿肉で作った 三条の湯特性のローストジビエは絶品です。シメジの天ぷらもおいしかったなぁ。 なんで、ロバート・デニーロかというと、昔”ディアハンター”という映画があって 主役がロバート・デニーロだったのだそう。社長さんは雲取山で”ディアハンター”してるから。 社長さん曰く、昔、雲取山山頂にはお花畑が広がり、たくさんの高山植物が咲き乱れていて とくに小雲取へ向かう稜線はヤナギランのピンクの絨毯が広がっていたそうです。 わたしが最初に来た頃も、シモツケソウやクガイソウ、マツムシソウなどが咲いていました。 あの景色をもう一度甦らせ後世の人たちに残してやりたい。 増えすぎてしまった鹿の数を減らし、食物連鎖のサイクルを戻すには人の手が必要。 駆除された鹿も食肉として命をいただく、バイオトイレも環境を守るために取り入れた。 こうして自然は循環されているということを、 『俺は、雲取山の山小屋から伝え続けたいと思っているんだよ。』と語る社長さん。 ギターも聞かせてくれるし、中々イケメンの雲取山のデニーロさんなのでした。 今夜は女性一人で一部屋取らせていただきました。 贅沢をさせていただきありがとうございました<m(__)m> 灯りが点った山小屋は風情がありますね。 山峡の山小屋の空は、ほんのり暮れ色…どこかで聞いたフレーズです(^_-) 宵の明星が現れました。コンデジで何とか撮れました。 ガイド仲間と山談義の後、外に出てみると、満点の星空でした。 はるか昔に見た、あの星空のようでした。
by kazematikado
| 2016-08-01 17:44
| 山と森
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